■ 断食と新しい朝と。

戦場から無傷で戻ってきた。
だけど兵士は、
戦死するつもりだったのかもね。
自分の弱さと、
大丈夫という言葉と、
ほんの少しの思い出を持って墓場まで。
連れて行けたら完成するから。

そんな顔させるつもりで、
夢の中会いに行ったんじゃないわ。
どうしてあたしのために泣くの？
悲しい顔しないで。
自分で決めたことだもの。
きっとすぐ笑えるよ。
笑えるよ…

そこそこ笑っていれば、
日常は上手くいくわ。
修羅場回避と底抜けの信頼のおまけつきで。
慈しむような目で正論だけ吐いていれば、
怪我だけはしないわ。
首を絞めればいいじゃない。
そう簡単に死なないからさ。
そんなときは。

見抜かれるのが怖いの。
騙された振りでいいよ。
踏み込まれるのが怖いの。
最後までじゃないでしょう？
要らない。
そんな中途半端なもの。

楽になった。
瞳の向こうに瞳を見る罪悪感から。
その代わり、
生まれたことのない感情が支配している。
上手く歩けないな。

でもひとつだけ、
消さないであげてください。
誰を傷つけて、
何を失っても、
そんな覚悟で守ったものを。
そこにあった証拠は、
そこにいた証拠は、
消さないであげてください。
あたしからもお願いします。

ずっと眠っていられたらいいのに。
その声に似てるなんて誰が言ったの？