■ 笑い納め。

もうすぐ強制力の期限が切れる。
消えないと思ってた傷がいつの間にか薄れていて、
なんだか切なくなって鋭いものを突きつけた。
以前なら涙が止まらなくなって傷つけただろう。
でも何も感じなかった。
傷つけたって何も感じないかも。
そう思ったら馬鹿らしくなって腕を下ろした。
今は「元通り」すら怖い。

今更になって気付く。
優しさの向こうに何の姿を見てたのか。
そして申し訳なくなる。
明確なものを必要としてあげなかったのはあたしだ。
じゃあその姿の向こうに何を見ていたか。
そんなこと聞かれたらもう死んでも詫びきれないぐらいの気持ちになる。
爆破が完了して跡形もなくなったら、
もう一度整理しよう。

漸く美談の囲いから飛び出した。
いつかは戻りたいのだけれど、
次の一歩をどちらに進めるか。
戻るならいつでも戻れるさ。
そうだよね。

最後のスイッチを押せばきっとその果てで会える。
元通りでもひとりぼっちでもなく。
会いたい人が何人いたとしても、
いつかきっと始められるさ。

暫く塞いでいようとした耳のその向こうから聞こえた音色は、
胸を張るには十分だった。
「二度と開くか！」と開こうとした口を塞いだものは思ったより甘美で、
笑っているには十分だった。

この道を通るものに変化はない。